
コンプライアンスとは何か?企業が抑えるべき基本と重要性
昨今、企業不祥事が相次いで発覚し、コンプライアンスの重要性が改めて注目されています。コンプライアンスとは、法令や社会的規範を遵守し、倫理的な行動をとることを指します。
単に法律を守るだけでなく、社会からの要請に応えることも求められる時代となりました。企業には、ステークホルダーからの信頼を獲得し、持続可能な成長を実現するために、コンプライアンス経営が欠かせません。
しかし、実際にコンプライアンス体制を構築し、社内に浸透させるのは容易ではありません。本記事では、コンプライアンスの基本的な考え方から、体制構築の具体的方法、違反事例とその影響まで、総合的に解説します。コンプライアンス経営の重要性と実践のポイントを理解し、企業価値向上につなげていただければと思います。
この記事の目次[非表示]
- 1.コンプライアンスとは
- 1.1.コンプライアンスの定義
- 1.2.法令遵守の重要性
- 1.3.コンプライアンスの対象範囲
- 1.4.コンプライアンス違反のリスク
- 2.企業におけるコンプライアンスの目的と意義
- 2.1.ステークホルダーからの信頼獲得
- 2.2.リスクマネジメントの一環
- 2.3.持続可能な企業活動の実現
- 3.コンプライアンス体制の構築
- 3.1.トップのコミットメント
- 3.2.コンプライアンス推進部門の設置
- 3.3.社内規程の整備
- 3.4.従業員教育の実施
- 3.5.内部通報制度の確立
- 4.コンプライアンス違反の事例と影響
- 4.1.法令違反の具体例
- 4.2.コンプライアンス違反による企業への影響
- 4.3.社会的信用の失墜
- 4.4.経済的損失と法的責任
- 5.コンプライアンス経営のメリット
- 5.1.企業イメージの向上
- 5.2.従業員のモチベーション向上
- 5.3.取引先からの信頼獲得
- 5.4.長期的な企業価値の向上
- 6.コンプライアンス経営の課題と対策
- 6.1.継続的なモニタリングと改善
- 6.2.経営陣のリーダーシップ
- 6.3.社会環境の変化への対応
- 7.まとめ
コンプライアンスとは
コンプライアンスは、企業経営において欠かせない重要な概念です。ここでは、コンプライアンスの定義から、その重要性、対象範囲、違反のリスクまでを詳しく解説していきます。
コンプライアンスの定義
コンプライアンスとは、企業が法令や社会的規範、倫理などを遵守し、社会的責任を果たすことを指します。単なる法律や規則の遵守だけでなく、企業倫理や社会的な要請に応えることも含まれます。企業は、法律や規則に違反すれば、罰則や制裁を受けるだけでなく、社会的信用を失墜し、事業の継続が困難になる可能性があります。そのため、コンプライアンスは企業の存続に直結する重要な課題なのです。
法令遵守の重要性
法令遵守は、コンプライアンスの中核をなすものです。企業は、業界や事業内容に応じて、様々な法律や規則の適用を受けます。
例えば、製造業であれば製造物責任法、金融業であれば金融商品取引法、医療機関であれば医療法など、業種ごとに守るべき法律が定められています。これらの法律に違反すれば、企業は行政処分や刑事罰を受ける可能性があり、事業の継続が脅かされるのです。
コンプライアンスの対象範囲
コンプライアンスの対象範囲は、法令遵守にとどまらず、企業倫理や社会的規範への対応も求められることは前述のとおりです。近年では、環境保護や人権尊重、情報セキュリティ対策など、法律で対応が明確に義務付けられていなくても、社会的に要請される事項が増えてきました。これらへの対応も、コンプライアンスの重要な要素となっています。
また、社内規程の遵守や、業界団体の自主規制への対応なども、コンプライアンスの対象になります。企業は、法令だけでなく、あらゆるルールや規範を守ることが求められているのです。
コンプライアンス違反のリスク
コンプライアンス違反は、企業に様々なリスクをもたらします。
直接的なものとしては、行政処分や刑事罰、損害賠償請求などがあります。加えて深刻なのが、社会的信用の失墜です。コンプライアンス違反が明るみに出れば、マスコミで大きく報道され、企業イメージが大きく損なわれます。その結果、株価の下落や取引先の離反、優秀な人材の流出など、様々な悪影響が生じるのです。場合によっては、事業の継続そのものが困難になることもあります。
一度失った信用を回復するには、膨大な時間とコストがかかりますし、回復が難しく、撤退を余儀なくされる場合もあります。だからこそ、コンプライアンスは企業経営において最優先の課題なのです。
企業におけるコンプライアンスの目的と意義
近年、企業におけるコンプライアンスの重要性が高まっています。ここでは、その目的と意義について解説をします。
ステークホルダーからの信頼獲得
コンプライアンスは、ステークホルダー(利害関係者)からの信頼獲得にも重要な役割を果たします。株主、従業員、取引先、消費者など、企業を取り巻く様々なステークホルダーの期待に応えることが求められているのです。
例を挙げると、労働基準法を遵守し、従業員の権利を尊重する企業は、優秀な人材の確保や定着につながります。公正な取引を行う企業は、取引先から信頼され、長期的なパートナーシップを築くことができるでしょう。
一方、コンプライアンス違反は、ステークホルダーからの信頼を失う原因となります。不祥事が発生した企業は、株主総会で厳しい追及を受けたり、従業員のモチベーション低下を招いたりする恐れがあります。つまり、コンプライアンスは、ステークホルダーとの良好な関係構築に欠かせない要素なのです。
リスクマネジメントの一環
コンプライアンスは、企業のリスクマネジメントにおいても重要な位置づけにあります。法令違反や不正行為は、企業経営に大きなリスクをもたらす可能性があるためです。
具体的には、カルテルやインサイダー取引といった不正行為が発覚した場合、巨額の課徴金や損害賠償を求められるリスクがあります。役員や従業員の刑事責任が問われ、企業の存続さえ危ぶまれる事態になりかねません。
こうしたリスクを未然に防ぐためには、コンプライアンス体制の整備が不可欠です。コンプライアンスの徹底は、企業リスクを最小限に抑えるための有効な手段なのです。
持続可能な企業活動の実現
コンプライアンスは、持続可能な企業活動の実現にも深く関わっています。社会の一員として、企業には環境保護や人権尊重など、様々な責任が求められています。
例えば、脱炭素社会の実現に向けて、温室効果ガス排出量の削減が喫緊の課題となっています。省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用など、環境規制に対応した取り組みが不可欠でしょう。サプライチェーン上の人権問題にも目を向ける必要があります。児童労働や強制労働など、人権侵害が疑われる取引先とは、速やかに関係を見直すことも求められます。
こうした社会的責任を果たすことは、企業の持続的成長につながります。コンプライアンスを軸とした経営を実践することで、社会から必要とされる存在になれるのです。つまり、コンプライアンスは、企業の持続可能性(永続的発展)を支える礎だといえるでしょう。
コンプライアンス体制の構築
企業がコンプライアンスを徹底するためには、適切な体制の構築が不可欠です。ここでは、コンプライアンス体制を構築する上で重要な要素について順に解説します。
トップのコミットメント
コンプライアンス体制の構築において、最も重要なのはトップマネジメントの強いコミットメントです。経営者自らがコンプライアンスの重要性を認識し、社内に浸透させる努力を惜しまないことが求められます。
具体的には、経営理念や行動指針にコンプライアンスの精神を盛り込み、自ら率先して模範を示すことが肝要です。加えて、コンプライアンス違反に対しては厳正な姿勢で臨み、二度と同様の事態が起こらないよう再発防止に尽力しなければなりません。トップの強い意志なくして、真のコンプライアンス経営は成し得ないのです。
コンプライアンス推進部門の設置
コンプライアンスを円滑に推進していくためには、専門の部門を設置することが有効です。この部門が中心となって、社内規程の整備や従業員教育、モニタリングなどを担います。コンプライアンス推進部門は、社長直轄の独立組織とすることが望ましいでしょう。各部門から独立していることで、客観的な立場から牽制機能を発揮することができます。
また、必要に応じて外部の専門家を招聘し、高度な知見を取り入れることも検討すべきです。組織としての実効性を高めるには、適切な権限と人員の配置が欠かせません。なお、専門の部門を設置することが難しい場合でも、同様の機能を何らかの形で確保しつつ、組織的に推進していくことが重要です。
社内規程の整備
コンプライアンス体制を支える基盤となるのが、社内規程の整備です。企業理念や行動規範をはじめ、個人情報保護方針、ハラスメント防止規程など、業務に関わるルールを明文化することが求められます。社内規程を整備する際は、網羅性と具体性を重視しましょう。どのような行為が違反に当たるのかを明確に示し、違反した場合の罰則規定も設けておく必要があります。
また、規程類は定期的に見直しを行い、法改正などに速やかに対応できる体制を整えておくことも肝要です。従業員への定期・不定期に周知徹底を図り、規程の形骸化を防ぐ工夫も欠かせません。
従業員教育の実施
コンプライアンス意識を社内に浸透させるには、従業員教育が重要な役割を果たします。単に知識を伝えるだけでなく、具体的な事例を交えながら、コンプライアンスの重要性を実感できる研修を心がけましょう。新入社員研修や管理職研修など、階層別の教育プログラムを用意するのも効果的です。
e-learningの活用により、時間や場所の制約を受けずに学習できる環境を整えるのも一案でしょう。研修の効果を測定するため、理解度テストを実施するなどの工夫も必要です。一過性の取り組みに終わらせず、継続的な教育を行うことが肝要と言えます。
内部通報制度の確立
万が一、コンプライアンス違反が発生した場合やそのおそれが生じた場合などに備え、内部通報制度を確立しておくことが重要です。違反行為等を早期に発見し、適切に対処できる体制を整えることで、企業は大きなダメージを未然に防ぐことができるのです。
内部通報制度を機能させるには、通報者の秘密を厳守し、不利益な取り扱いを受けることがないよう配慮することが大切です。通報窓口は社内だけでなく、社外などにも設置し、専門家の助言を仰げる体制を整えましょう。寄せられた通報は速やかに調査を行い、問題があれば直ちに是正措置を講じなければなりません。制度の存在を従業員に積極的にアピールし、活用を促すことも重要です。
→ 当社が提供する内部通報窓口サービス「リスクホットライン®」
コンプライアンス違反の事例と影響
コンプライアンス違反とは、企業や組織が法令や社会的規範に反する行為を行うことを指します。ここでは、具体的な法令違反の事例と、それがもたらす企業への影響について詳しく見ていきましょう。
法令違反の具体例
企業における法令違反には、様々な形態があります。例えば、以下のような事例が挙げられます。
- 独占禁止法違反(カルテル、談合など)
- インサイダー取引
- 贈収賄
- 労働基準法違反(残業代未払い、ハラスメントなど)
- 個人情報保護法違反
- 各種業法違反
- 環境関連法規の不遵守
これらの違反行為は、その内容や程度によって、刑事責任や行政処分の対象となる可能性があります。
コンプライアンス違反による企業への影響
コンプライアンス違反が発覚した場合、企業は様々な影響を受けることになります。具体的には以下のような事態が想定されます。
社会的信用の失墜
法令違反が明るみに出ると、企業の社会的信用は大きく損なわれます。マスメディアによる報道や、ソーシャルメディア上での批判的な声は、ブランドイメージの低下につながります。顧客や取引先からの信頼を失うことで、ビジネスチャンスを逸したり、契約解除などの不利益を被ったりするケースもあります。
経済的損失と法的責任
コンプライアンス違反による経済的損失としては、以下のようなものが考えられます。
- 行政処分に伴う課徴金や罰金
- 損害賠償請求への対応
- 関連する事業の中止や撤退に伴うコスト
- 風評による逸失利益
- 再発防止策の実施にかかる費用
加えて、違反行為に関与した役員や従業員に対する刑事責任の追及や、株主代表訴訟のリスクもあります。このように、コンプライアンス違反は企業の存続をも脅かしかねない重大な問題なのです。不正行為を未然に防ぎ、健全な経営を行うためには、コンプライアンス意識の徹底と、実効性のある内部統制システムの構築が不可欠といえるでしょう。
コンプライアンス経営のメリット
コンプライアンス経営には様々なメリットがあります。ここでは、その中でも特に重要な4つのメリットについて詳しく解説していきます。
企業イメージの向上
コンプライアンスを重視する企業は、社会的責任を果たしていると評価されます。これは、企業イメージの向上につながります。企業が法令や社会規範を遵守し、倫理的な行動をとることは、ステークホルダーからの信頼を獲得するための基盤となります。
特に、消費者や投資家は、コンプライアンス意識の高い企業を好意的に捉える傾向にあります。例えば、環境保護に積極的に取り組む企業や、労働者の権利を尊重する企業は、社会的評価が高まります。このような企業は、ブランド価値の向上や顧客ロイヤルティの強化につながるでしょう。
従業員のモチベーション向上
コンプライアンス経営は、従業員のモチベーション向上にも寄与します。倫理的で公正な企業文化は、従業員の士気を高める効果があるのです。従業員は、自分が正しいことをしていると感じられる環境で働くことで、仕事へのやりがいを感じられます。
また、コンプライアンス違反を抑止する風土があれば、不正行為へ加担してしまうのではないかという潜在的不安から解放されます。さらに、コンプライアンス教育を通じて、従業員の意識が高まることも期待できます。会社の方針や行動規範を深く理解することで、一人ひとりが責任ある行動をとれるようになるでしょう。
取引先からの信頼獲得
コンプライアンスを重視する企業は、取引先からの信頼を獲得しやすくなります。法令遵守や誠実な対応は、ビジネスパートナーとの良好な関係構築に不可欠だからです。取引先は、コンプライアンス意識の高い企業を信頼し、長期的な取引を望む傾向にあります。特に、大企業や官公庁との取引では、コンプライアンスの徹底が前提条件となるケースが多いでしょう。
また、サプライチェーン全体でのコンプライアンス意識の向上にもつながります。取引先に対して、コンプライアンスの重要性を説明し、一緒に取り組む姿勢を示すことで、より強固なパートナーシップを築けるはずです。
長期的な企業価値の向上
コンプライアンス経営は、長期的な企業価値の向上に貢献します。これは、リスクマネジメントの観点からも重要なポイントです。安定的な収益の確保や資金調達面でもプラスに働くという点から企業価値の向上が期待できるものです。
コンプライアンス経営の課題と対策
コンプライアンス経営を実践していく上では、様々な課題が存在します。それぞれの課題に対して適切な対策を講じていくことが求められます。
継続的なモニタリングと改善
コンプライアンス経営を実効性のあるものにするためには、継続的なモニタリングと改善が欠かせません。コンプライアンス違反の防止や早期発見のために、内部通報制度の整備や定期的な監査の実施などが求められます。
また、定期的なコンプライアンス・アンケートの実施や職場における1on1の実施なども推奨されます。モニタリングを通じて明らかになった課題や問題点については、迅速かつ適切に改善措置を講じていく必要があります。加えて、コンプライアンス違反が発生した場合には、事実関係を徹底的に調査し、再発防止策を講じるとともに、社内外への適切な情報開示を行うことが重要です。
経営陣のリーダーシップ
コンプライアンス経営の推進には、経営陣のリーダーシップが不可欠です。経営トップ自らがコンプライアンスの重要性を認識し、強いメッセージを発信し続けることが求められます。経営陣は、コンプライアンス違反に対して厳正な姿勢で臨み、違反者に対しては厳しい処分を下すことも必要です。
同時に、コンプライアンス推進のための体制整備や資源配分についても、経営陣の積極的な関与が求められます。コンプライアンス委員会の設置など自律的にコンプライアンスの徹底や推進を組織的に実践していくこともその一例です。
社会環境の変化への対応
企業を取り巻く社会環境は常に変化しており、コンプライアンス経営もその変化に対応していく必要があります。例えば、近年ではESG(環境・社会・ガバナンス)への関心の高まりを受け、環境問題や人権問題などへの配慮がより一層求められるようになっています。
また、デジタル化の進展に伴い、サイバーセキュリティやデータプライバシーへの対応も重要性を増しています。こうした社会環境の変化を的確に捉え、コンプライアンス体制の見直しや強化を図っていくことが、持続的な企業価値の向上につながります。
まとめ
コンプライアンスとは、法令や社会的規範を遵守し、倫理的な行動をとること、社会的要請に応えていくことを指します。企業がコンプライアンス経営を実践することは、社会からの信頼獲得や企業価値の向上につながります。
コンプライアンス体制を構築するためには、トップのコミットメントを始め、推進部門や推進者の設置、社内規程の整備、従業員教育の実施、内部通報制度の確立など、様々な取り組みが求められます。コンプライアンス違反が発覚した場合、企業は社会的信用の失墜や経済的損失、法的責任などの深刻な影響を受けるリスクがあります。
一方で、コンプライアンス経営を徹底することで、企業イメージの向上、従業員のモチベーション向上、取引先からの信頼獲得、長期的な企業価値の向上といったメリットが期待できます。ただし、コンプライアンス意識の浸透や継続的なモニタリング、経営陣のリーダーシップ、社会環境の変化への対応など、克服すべき課題も存在します。
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