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フリーランス保護法の施行と相談窓口の整備について

11月1日、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス保護法」)が施行されます。

これまでフリーランスという弱い立場の者に対して、一部ではありますが「発注企業が一方的に不利益な条件での取引を強いる…」という悪しき状況が常態化しているケースが多く見られました。実は私の妻もフリーのイラストレーターを20年近くやっているのですが、発注時に金額が示されないことなどはざらにあり、納品後に想像よりはるかに安い金額を告げられた…なんてこともよくある話でした。

しかしフリーランスは、あまりお金のことを主張しすぎると「面倒くさい奴だな」と思われ、以降の発注が来なくなってしまうかもしれないとの恐怖心から、なかなか口には出せなかったようです。妻も新法の話を聞き「これで少しは仕事がやり易くなるのかな?」と期待しているようでした。では、今回の法律の概要と特に相談窓口の整備について解説していきましょう。

この記事の目次[非表示]

  1. 1.フリーランス保護法の対象者
  2. 2.業務を発注する者の義務
    1. 2.1.①書面などによる取引条件の明示
    2. 2.2.②報酬支払期日の設定と期日内の支払
    3. 2.3.③7つの禁止行為
    4. 2.4.④募集情報の的確表示
    5. 2.5.⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
    6. 2.6.⑥ハラスメント対策に係る体制整備
    7. 2.7.⑦中途解除等の事前予告・理由開示
  3. 3.違反事項についての申出
  4. 4.罰則
  5. 5.相談窓口の整備
  6. 6.まとめ

フリーランス保護法の対象者

まず、業務を受ける側であるフリーランスとは個人として事業を行う者だけでなく、法人だけれど従業員がおらず一人で事業を行っている者の両方が該当します。

発注者側は法人の規模や、発注する業務の期間により法的義務の内容が変わっています。


発注事業者

フリーランス

法的義務

A

従業員を使用していない事業者
(フリーランスも含む)

  • フリーランス
  • 従業員を雇用していない事業者(1人社長)

1

B

従業員を使用している事業者

1,2,4,6

C

従業員を使用している事業者
一定期間行う業務委託

1,2,3,4,5,6,7

業務を発注する者の義務

フリーランスに業務を発注する者には、以下の義務が課せられることになります。

①書面などによる取引条件の明示

フリーランスに仕事を依頼する場合には、直ちに書面やメール等で取引条件を提示する義務があります。つまり口頭での発注はNGです。

取引条件としては、仕事の内容、報酬額、支払期日など9つの項目があります。

②報酬支払期日の設定と期日内の支払

報酬の支払期日は、「発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内」で定め、一度決めた期日までに支払う必要があります。

従来は、90日後など発注者に有利な形で一方的に支払期日が決められていたことがありました。というか、いつまでたっても払い込まれないので、問合せて見るとすっかり忘れられていた…なんてこともあったようです。

③7つの禁止行為

フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には、以下の7つの行為が禁止されています。

  1. 受領拒否(注文した物品または情報成果物の受領を拒むこと)
  2. 報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)
  3. 返品(受け取った物品を返品すること)
  4. 買いたたき(類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)
  5. 購入・利用強制(指定する物・役務を強制的に購入・利用させること)
  6. 不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)
  7. 不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)

④募集情報の的確表示

広告などによりフリーランスの募集情報を提供する際には、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保たなければならないとされています。まあ、当たり前のことですね。

⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮

フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合、フリーランスからの申出に応じて、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。フリーランスであっても育児や介護を理由に発注者へ配慮を要求できるというのは、非常に画期的な内容と言えるのではないでしょうか。

⑥ハラスメント対策に係る体制整備

ハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることがないよう、相談対応のための体制整備などの必要な措置を講じなければなりません。これについては、後ほど詳しく述べます。

⑦中途解除等の事前予告・理由開示

フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合で、その業務委託に関する契約を解除する場合や更新しない場合、少なくとも30日前までに、①書面 ②ファクシミリ ③電子メール等による方法でその旨を予告しなければなりません。

いままでは、ずっとやっていた業務がいきなり打ち切られたということもあったようですが、それが「例外事由」(①第三者の利益を害するおそれがある場合、②他の法令に違反することとなる場合)を除きNGとなりました。

違反事項についての申出

上記の1~3の義務について発注者側の違反があった場合は、フリーランスは公正取引委員会又は中小企業庁長官に対して申し出ることができます。また、4~7につき違反があった場合は、厚生労働大臣に申し出ることができます。

申出を受けた行政機関は、必要な調査を行い、違反が認められた場合は発注者側に対して是正の勧告等をすることになります。なお、この申出をしたからといって、発注者側がフリーランスに対して例えば今後の発注を止めたり数量を減らしたりするなどの不利益行為を行うことは禁止されています。

さらに、上記6で設けられたハラスメント相談の窓口に相談したことを理由に発注者側が不利益な行為を行うことも禁止されています。

ただし、発注量が減った理由が、例えば納品物の品質が悪い、料金が高いなど別の理由がある場合は、不利益行為なのか、正当な経済上の判断なのかは実際のところ難しい判断となるかもしれません。

罰則

フリーランス保護法では、発注者が法で定められた規定に違反している場合、国は是正又は必要な措置をとるよう勧告することができるとされています。そしてその勧告に従わなかった場合は命令や企業名の公表をすることができ、それにも従わなかった場合は50万円以下の罰金を課すことができます。

また、発注者が法に定められた報告をしなかったり、虚偽の報告をしたり、国の検査の妨害などをした場合も50万円以下の罰金を課すことが出来ます。

また、法人、個人双方を罰することができます。

相談窓口の整備

前述のとおり、発注企業にハラスメントに対応する相談窓口の整備が義務付けられていますが、いったいどのように設置・運営するのが良いでしょうか?

窓口設置は、現在、従業員・役員向けの内部通報窓口を設けている場合は、それをフリーランスも利用できるように拡大するのが一番考えやすく現実的でしょう。一方、現在内部通報窓口を設けていない場合は、フリーランスのために新たに設置する必要があります。現在、公益通報者保護法では従業員300人以下の企業は窓口の設置は努力義務ですが、フリーランス保護法では必ず設置しなくてはならないのでご注意ください。

また、フリーランスにとって相談しやすい窓口であることも重要なポイントです。フリーランスにとって発注主の存在は大きく、企業の窓口に対して「物申す」ということはかなりハードルが高いと言えるかもしれません。従業員であれば労働組合や同僚などがサポートしてくれたりしますが、フリーランスはたったひとりで「闘う」ことになりますから。

そこで、やはり検討したいのが中立な社外の窓口でしょう。公正取引委員会のHPでも「ハラスメントに関する相談の担当者や相談対応制度を設けたり、外部の機関に相談への対応を委託する」と、外部機関の活用も示唆しています。当社では、フリーランス向けのホットラインサービスも準備中ですので、ぜひご検討いただければ幸いです。

まとめ

  • 発注企業はフリーランスに対して、誠実に対応することが求められる
  • 発注企業は法の違反を訴えたフリーランスに対し不利益な取扱いをしてはならない
  • フリーランス保護法に違反すると、刑事罰が課せられることもある
  • 相談体制の整備(窓口の設置)は、すべての発注企業の義務となる

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