News Release
報道関係各位
2024年10月3日
株式会社エス・ピー・ネットワーク
内部通報窓口への年間通報件数は従業員100人あたり約0.5件
約4割の企業が会社の対応結果に納得が行かない通報者への対応に苦慮した経験あり
【内部通報制度の運営状況アンケート調査(2024年)】
企業の危機管理を総合的に支援する株式会社エス・ピー・ネットワーク(本社:東京都 代表取締役社長:熊谷信孝)は、365社の内部通報窓口担当者を対象に内部通報制度の運営状況を調査しました。
企業や組織の不祥事の多くが内部通報をきっかけとして明らかになっていることをはじめ、組織における不正等の早期発見の手段として内部通報制度の重要性は増しています。今回の調査によって、企業担当者が本来の制度の趣旨とは異なる不平・不満の通報対応に追われていることや、4割弱の企業が対応結果に納得いかない通報者によるしつこい通報やSNS投稿などの対応に苦慮した経験があることなど、内部通報制度上の課題が浮き彫りになりました。
調査期間 | 2024年7月19~8月18日 |
調査方法 | Webアンケート調査 |
調査対象 |
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サンプル総数 | 365社 |
※ 誤記を一部修正いたしました。(2024年10月3日)
以下、調査結果主要項目を抜粋し紹介します。
従業員100人あたりの通報件数を算出(総通報件数/総従業員数)した結果、0.54件/年でした。
当社が実施した2018年調査結果の約0.5件/年、2021年調査結果の約1.3件/年(※1)と比較すると、2021年調査からは通報が減少しています。調査対象の企業が異なるため、一概に比較はできませんが、今回の調査では小規模の企業からの回答も多かったことから、小規模企業の通報件数が少なく、全体の通報件数を押し下げていることも考えられます。
※1:株式会社エス・ピー・ネットワーク「内部通報制度の現状調査(2021年)」
https://www.sp-network.co.jp/column-report/report/spn-report/whistleblower_system2021.html
今回の調査において、不利益行為が確認されたことが「ある」という回答が13.1%も確認されています。通報者への不利益行為は法令違反であり、本来であれば0%でなければなりません。
不利益行為を恐れた労働者が通報を躊躇すればリスク情報を早期収集できず、企業の自浄作用が損なわれます。不利益行為の抑止には体制整備のほか、通報者保護の企業姿勢を社内周知することも必要です。
Q.過去に、通報者に対する不利益行為が確認されたことはありますか(n=268)※不明の97社を除く
Q. 不利益行為の具体的な内容をお教えください(自由記述)
※一部抜粋 下線は当社にて加筆
消費者庁の「公益通報者保護制度検討会 中間論点整理」(令和6年9月2日)(※2)においては、不利益取扱い抑止の効果が不十分であり、刑事罰が必要との意見も出ています。
※2:消費者庁「公益通報者保護制度検討会 中間論点整理」(令和6年9月2日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/meeting_materials/review_meeting_004/assets/consumer_partnerships_cms205_240906_01.pdf
「パワハラではないか?として通報が入るのは全体の何%か」という設問に51%以上であるとの回答を選択した企業は全体の約3割(32.6%)でした。その中で、「パワハラではないか?という通報のうち、調査の結果パワハラと認定されるのは何%か」との設問に10%以下であるとの回答を選択した企業は約半数(52.1%)に上りました。
このことから、パワハラの認定は難しいものであることがわかります。また、内部通報担当者の課題を問う設問の自由記述に「通報者自身が優位に進むよう、言葉やシーンを切り取って通報し「これはパワハラですよね?」と承認してもらいたいようなケースが急増している。」等の回答も確認されたほか、パワハラ未満の内容までもパワハラとして通報するケースが増加しているとも考えられます。
内部通報の課題として、内部通報窓口が不満のはけ口として利用されたり、部門で解決すべき問題までもが窓口に寄せられたりしているという回答が確認されました。
2.において、8割を超える企業においては通報者への不利益行為が確認されなかったことから、内部通報や公益通報における通報者保護の意識は浸透していると考えられる一方で、本来の内部通報制度の目的とは異なる、不平や不満の通報や、本来であれば職制上のラインで解決すべき内容の通報が寄せられ、その対応に窓口担当者が疲弊してしまうという現実も浮き彫りになりました。
今回の調査においては37.6%の企業で、会社の対応結果に納得がいかない通報者の対応に苦慮したことがあるという回答が確認されました。
内部通報は通報された後、通報内容を調査したうえで、加害者への指導や処分などの対応がなされますが、必ずしも通報者の望む通りの結果になるとは限りません。こうした会社の調査結果に納得せず、調査のやり直しを求めたり、しつこく通報を続けたり、調査内容をSNSに掲載したりする通報者もいる事実が明らかになりました。
Q. 会社の対応結果に納得がいかない通報者の対応に苦慮したことがありますか(n=348)
※不明の17社を除く
2022年の改正公益通報者保護法施行により、従業員数が301人以上の事業者には公益通報対応業務従事者(以下「従事者」)を指定することが義務づけられ、従事者への研修も義務化されました。そうした中、企業担当者の悩みとしては担当者の不足や対応の属人化、ノウハウの蓄積に課題を感じる声が寄せられました。
今回の調査においては、49.7%の企業において内部通報に関するマニュアルがないとの回答が得られました。
内部通報対応は、担当者間で口頭だけで対応方法が引き継がれたり、OJTのみで指導したりするケースや対応が属人化している場合が少なくありません。対応が属人的になれば、慣れている担当者が外れるたびに調査のクオリティーが下がったり、処分の方針が変わったりということにもなりかねません。そのため、マニュアルの整備が重要であり、また、マニュアルがあれば良いわけではなく、各社の方針に合った実効性のあるマニュアルを整備することが重要です。
Q.内部通報に関するマニュアルがありますか(n=321)
※不明の44社を除く
公益通報者保護法では、「内部公益通報対応体制の定期的な評価・点検を実施し、必要に応じて内部公益通報対応体制の改善を行う」ことが義務付けられています。しかし、今回の調査においては、48.9%の企業において内部通報体制を定期的に評価・点検していないことが分かりました。
Q.内部通報体制を定期的に評価・点検していますか(n=282)
※不明の83社を除く
今回の調査を通して、内部通報制度上の課題がいくつか明らかになりました。
今回の調査で、通報者への不利益行為が約1割の企業で確認されました。そのほか、内部通報制度の評価・点検も約半数の企業が実施していないことが明らかになりました。窓口を運用する中で、法の趣旨を理解し、最低限、法律の求める内容をクリアする必要があります。そのうえで、窓口の実効性向上に関する取り組みを進めていくこととなります。
2022年の改正公益通報者保護法の施行を契機として、特に従業員数301人を超える企業を中心に内部通報窓口自体の設置は進みましたが、通報が少ない企業、通報が多い企業それぞれにおいて、内部通報担当者が課題を抱えながら運用している状況にあるようです。
例えば今回、窓口担当者の悩みを問う設問において、「通報件数が少ない」という悩みもある一方、「通報案件のほとんどが不平や不満であり…」や「…「本来は自組織で解決すべき案件」を内部通報を通じて自身は安全圏に身を置きながら自己の希望を成し遂げようとする案件が多数あり」など、本来の趣旨と異なる利用をされていることに疑義を抱く回答が目立ちました。しかし、人間関係の悩みや、職場に上手く馴染めない従業員からの相談も組織のどこかでは受ける必要があります。また、通報が多い拠点は管理職のマネジメント力に不備・不足があったり、過剰なノルマや人員不足で組織が疲弊していたりする状況が確認されることもあります。ウェルビーイングや健康経営の重要性が増している中、今後、より効果的かつ実効性の高い内部通報窓口を運用するための継続的な工夫や努力が望まれます。
株式会社エス・ピー・ネットワークは、1996年に創業した企業危機管理の専門会社です。反社会的勢力排除を始め、法務・広報からITに関する企業危機管理コンサルティングのほか、危機管理の実践対応や身辺警備など、企業に多彩な危機管理ソリューションを提供しています。
【本件に関する報道関係者のお問い合わせ先】
株式会社エス・ピー・ネットワーク 広報担当:大越、小田、笹嶋
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