暴排トピックス

当社副社長・芳賀によるコラムです。

暴排条例等の状況(2024/08)



目次[非表示]

  1. 1.暴力団排除条例改正動向(兵庫県)
  2. 2.暴力団排除条例に基づく勧告事例(北海道)
  3. 3.暴力団排除条例に基づく勧告事例(埼玉県)
  4. 4.暴力団排除条例に基づく逮捕事例(埼玉県)
  5. 5.暴力団対策法に基づく称揚禁止命令発出事例(兵庫道)
  6. 6.暴力団対策法に基づく中止命令発出事例(沖縄県)
  7. 7.暴力団対策法に基づく逮捕事例(大阪府)
  8. 8.暴力団対策法に基づく再発防止命令発出事例(神奈川県)
  9. 9.暴力団対策法に基づく再発防止命令発出事例(愛媛県)

暴力団排除条例改正動向(兵庫県)

兵庫県公安委員会は、ショッピングモールやホームセンター、劇場、ボウリング場のようなスポーツ施設などの「大規模集客施設」周辺200メートル以内で、暴力団事務所の開設を禁止すると決定しています。

子どもが出入りする施設周辺を規制対象にすることで、青少年保護につなげる狙いがあります。議会による議決が必要な兵庫県暴排条例の改正はせず、兵庫県暴排条例施行規則の一部を改正し、2024年10月1日に施行予定で、集客施設周辺を禁止対象に加えるのは全国初だといいます。

現行の条例では、都市計画法が定める第1種住居地域や商業地域などを禁止区域に設定、ほかに学校や児童福祉施設の周囲200メートル以内での開設も禁止していますが、今回、延べ床6千平方メートル以上の大規模集客施設周辺を追加、尼崎や姫路、丹波など少なくとも10市町の計15施設周辺が新たな禁止区域になるといいます。

暴力団排除条例に基づく勧告事例(北海道)

室蘭市の暴力団員からしめ飾りを購入したとして、北海道公安委員会は、北海道暴排条例(北海道暴力団の排除の推進に関する条例)に基づき、同市と登別市の飲食店や建設会社など12業者に対し、暴力団に利益を与えないよう勧告しています。

報道によれば、暴力団側が約50業者分の販売対象を記したリストを作り、北海道警が押収したことが判明、北海道警は、暴力団員と一部の地元業者で約30年前から、みかじめ料として金品の授受があったとみて調べているといいます。

なお、北海道内で2024年、北海道暴排条例に基づく業者への勧告が16件に上り、過去最多となっているといいます。

今回の大規模な勧告は、北海道警が押収した暴力団側の販売先リストが端緒となったものの、飲食店などは「長年の慣習」として断り切れず、多くが潜在化しているとみられています。

しめ飾りは暴力団の資金源で、道警は警戒を強めています。

▼北海道暴排条例(北海道暴力団の排除の推進に関する条例)

本条例第15条(利益供与の禁止)において、「事業者は、その行う事業に関し、暴力団員等又は暴力団員等が指定した者に対し、次に掲げる行為をしてはならない」として、「(1)暴力団の威力を利用する目的で、財産上の利益の供与をすること」が規定されています。

そのうえで、第22条(勧告)において、「北海道公安委員会は、第14条、第15条第1項又は第17条第2項の規定に違反する行為があった場合において、当該行為が暴力団の排除に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる」と規定されています。

暴力団排除条例に基づく勧告事例(埼玉県)

埼玉県暴排条例に違反して利益を供与したとして、埼玉県公安委員会は、埼玉県内で印刷会社を経営する事業者に勧告を行っています。

また、事業者から対償のない利益を受けたとして、六代目山口組傘下組織幹部の暴力団員にも勧告を行っています。

報道によれば、2024年1月、事業者は暴力団の活動や運営に協力する目的で、暴力団員から書状100部の印刷依頼を受け、相場の3万円を下回る1万9千円で提供していたといい、いずれも勧告内容を認め、事業者は「安い価格で印刷しました」、暴力団員は「ほかに印刷してくれる会社がなかった」と話しているといいます。

▼埼玉県暴排条例

本条例第19条(利益の供与等の禁止)において、「事業者は、その事業に関し、暴力団員又は暴力団員が指定した者に対し、次に掲げる行為をしてはならない」として、「(2)暴力団の活動又は運営に協力する目的で、相当の対償のない利益の供与をすること。」が規定されています。

そのうえで、第28条(勧告)において、「公安委員会は、第19条第1項、第22条第1項、第23条第2項、第24条第2項、第25条第2項又は第26条の規定に違反する行為があった場合において、当該行為が暴力団排除活動の推進に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、公安委員会規則で定めるところにより、必要な勧告をすることができる。」と規定されています。

暴力団排除条例に基づく逮捕事例(埼玉県)

JR大宮駅周辺の暴力団排除特別強化地域で営業する飲食店からみかじめ料を受け取ったとして、埼玉県警大宮駅周辺地区暴力団壊滅集中取締本部(組対1課、大宮署など)は、埼玉県暴排条例違反の疑いで住吉会傘下組織幹部の無職の男を再逮捕し会社役員の男を逮捕しています。

報道によれば、共謀の上、2023年8月、さいたま市大宮区仲町2丁目の路上で、同地内などに所在する飲食店2店舗の営業に関するみかじめ料として、現金計10万円を受け取った疑いがもたれています。

埼玉県警は2023年8月、同地域内で接待を伴う飲食店を無許可で営業したとして、20代の男2人を風営法違反(無許可営業)の疑いで逮捕、その後の捜査で、2人が組幹部の男にみかじめ料を渡していたことを特定、組幹部の男は、別事件に関する自宅の捜索時にコカインを所持していたとして、2024年6月に麻薬取締法違反で逮捕されています。

みかじめ料を渡した2人は、組幹部の男が暴力団関係者と認識した上で現金を渡していたとみられ、県警は任意で事情を聴いているといいます。

埼玉県暴排条例第22条の3(特別強化地域における禁止行為)第3項において、「特定営業者は、特別強化地域における特定営業の営業に関し、暴力団員に対し、用心棒の役務の提供を受けることの対償として利益の供与をし、又はその営業を営むことを容認する対償として利益の供与をしてはならない」と規定されています。

また、暴力団員についても、第22条の4において、「暴力団員は、特別強化地域における特定営業の営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない」として、「(3)特定営業者から前条第3項に規定する利益の供与を受けること」が規定されています。

そのうえで、第32条において、「次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」として、「(2)相手方が暴力団員であることの情を知って、第22条の3の規定に違反した者」と「(3)第22条の4の規定に違反した者」が規定されています。

暴力団対策法に基づく称揚禁止命令発出事例(兵庫道)

兵庫県公安委員会は、六代目山口組傘下組織組員の男に対し、暴力団対策法に基づき、服役終了後に出所祝いや慰労金などの報償の受け取りを禁じる「称揚等禁止命令」を発出しています。

報道によれば、組員の男は2022年8月、福岡県福津市にある神戸山口組傘下組織事務所に車をぶつけ、建造物損壊容疑で逮捕されています。

一方、兵庫県公安委員会は2023年6月、六代目山口組の篠田建市(通称・司忍)組長ら3人にも同命令を出し、この組員に報償を渡すことを禁じています。

命令の効力は出所から5年間で、現金提供のほか、組織内で地位を昇格させることも禁じられます。

六代目山口組と神戸山口組の対立抗争に関し、兵庫県公安委員会が同命令を出すのは今回で11件目になるといいます。

▼暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律

暴力団対策法第30条の5において、

「公安委員会は、指定暴力団員が次の各号のいずれかに該当する暴力行為を敢行し、刑に処せられた場合において、当該指定暴力団員の所属する指定暴力団等の他の指定暴力団員が、当該暴力行為の敢行を賞揚し、又は慰労する目的で、当該指定暴力団員に対し金品等の供与をするおそれがあると認めるときは、当該他の指定暴力団員又は当該指定暴力団員に対し、期間を定めて、当該金品等の供与をしてはならず、又はこれを受けてはならない旨を命ずることができる。ただし、当該命令の期間の終期は、当該刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過する日を超えてはならない」

として、

「一当該指定暴力団等と他の指定暴力団等との間に対立が生じ、これにより当該他の指定暴力団等の事務所又は指定暴力団員若しくはその居宅に対する凶器を使用した暴力行為が発生した場合における当該暴力行為」

が規定されています。

暴力団対策法に基づく中止命令発出事例(沖縄県)

沖縄県警沖縄署は、「払わんと死なすよ」などと暴力団の威力を示し、本島在住の50代男性に現金を贈与するように不当な要求をしたとして、暴力団対策法に基づき、旭琉会三代目富永一家の構成員の男性に中止命令を出しています。

報道によれば、「命令の内容について分かった。今後、相手に関わらない」と話し、命令書を受け取ったといいます。

暴力団対策法第9条(暴力的要求行為の禁止)において、「指定暴力団等の暴力団員(以下「指定暴力団員」という。)は、その者の所属する指定暴力団等又はその系列上位指定暴力団等(当該指定暴力団等と上方連結(指定暴力団等が他の指定暴力団等の構成団体となり、又は指定暴力団等の代表者等が他の指定暴力団等の暴力団員となっている関係をいう。)をすることにより順次関連している各指定暴力団等をいう。以下同じ。)の威力を示して次に掲げる行為をしてはならない」として、「二 人に対し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、みだりに金品等の贈与を要求すること」が禁止されています。

そのうえで、第11条(暴力的要求行為等に対する措置)第1項で「公安委員会は、指定暴力団員が暴力的要求行為をしており、その相手方の生活の平穏又は業務の遂行の平穏が害されていると認める場合には、当該指定暴力団員に対し、当該暴力的要求行為を中止することを命じ、又は当該暴力的要求行為が中止されることを確保するために必要な事項を命ずることができる」と規定しています。

暴力団対策法に基づく逮捕事例(大阪府)

絆會の本部事務所付近をうろついたとして、大阪府警は、暴力団対策法違反の疑いで、絆會と対立する六代目山口組「弘道会」傘下組織幹部と組関係者とみられる容疑者を逮捕しています。大阪府警は絆會関係者を襲撃する予定だったとみています。うろつき容疑での逮捕は全国初となります。報道によれば、共謀して大阪市中央区の絆會本部事務所付近を乗用車や徒歩でうろついたというもので、警戒中だった大阪府警の警察官が、事務所付近で不審な車を発見、2人が車から降りたところを任意同行し、逮捕したものです。暴力団対策法では、特定抗争指定暴力団の組員が対立組織の居宅や事務所付近をうろつくことを禁止行為と規定、絆會と六代目山口組は6府県の公安委員会が2024年6月、特定抗争指定暴力団に指定しています。 暴力団対策法第15条の3(特定抗争指定暴力団等の指定暴力団員等の禁止行為)において、「特定抗争指定暴力団等の指定暴力団員は、警戒区域において、次に掲げる行為をしてはならない」として、「二 当該対立抗争に係る他の指定暴力団等の指定暴力団員(当該特定抗争指定暴力団等が内部抗争に係る特定抗争指定暴力団等である場合にあっては、当該内部抗争に係る集団(自己が所属する集団を除く。)に所属する指定暴力団員。以下この号において「対立指定暴力団員」という。)につきまとい、又は対立指定暴力団員の居宅若しくは対立指定暴力団員が管理する事務所の付近をうろつくこと」が禁止されています。そのうえで、第46条において、「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」として、二 第15条の3の規定に違反した者」が規定されています。

暴力団対策法に基づく再発防止命令発出事例(神奈川県)

神奈川県公安委員会は、暴力団対策法に基づき、稲川会傘下組織の男性幹部に再発防止命令を発出しています。「金払わないと殺すぞ」と金品要求していたといいます。 暴力団対策法第9条(暴力的要求行為の禁止)において、「指定暴力団等の暴力団員(以下「指定暴力団員」という。)は、その者の所属する指定暴力団等又はその系列上位指定暴力団等(当該指定暴力団等と上方連結(指定暴力団等が他の指定暴力団等の構成団体となり、又は指定暴力団等の代表者等が他の指定暴力団等の暴力団員となっている関係をいう。)をすることにより順次関連している各指定暴力団等をいう。以下同じ。)の威力を示して次に掲げる行為をしてはならない」として、「二 人に対し、寄附金、賛助金その他名目のいかんを問わず、みだりに金品等の贈与を要求すること」が禁止されています。そのうえで、第11条(暴力的要求行為等に対する措置)第2項で、「公安委員会は、指定暴力団員が暴力的要求行為をした場合において、当該指定暴力団員が更に反復して当該暴力的要求行為と類似の暴力的要求行為をするおそれがあると認めるときは、当該指定暴力団員に対し、一年を超えない範囲内で期間を定めて、暴力的要求行為が行われることを防止するために必要な事項を命ずることができる」と規定しています。

暴力団対策法に基づく再発防止命令発出事例(愛媛県)

2024年3月愛媛県内の会社に対し用心棒として働く代償に金品を要求したとして、暴力団対策法違犯に対する中止命令を受けていた松山市の六代目山口組傘下組織組員の男が、以前にも別の会社に用心棒料などを要求していたとして、愛媛県警は再発防止命令を発出しています。報道によれば、男は2024年3月、新居浜市の運送事業者に対し、用心棒となる代わりに金品などを要求したため警察から中止命令が出されていましたが、その後の捜査で、男は204年1月にも松山市の道路舗装会社に対して同様の用心棒料を要求していたことがわかったものです。男は「わかりました」と命令に応じたということです。なお、再発防止命令に違反した場合について、暴力団対策法第46条において、「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」として、「一 第11条の規定による命令に違反した者」が規定されています。

芳賀恒人
芳賀恒人
代表取締役副社長/総合研究部 首席研究員